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素人レンズ教室−その10 

収差(7) これで氷解??、収差の疑問
 


先生 : 皆さん、静かに。さあ午後の授業を始めますよ。
ジロー : 先生!
先生 : あら、口尖がらせてどうしたの?
ジロー : 先に進むのもいいんですけど〜。なんか今までの収差の勉強がイマひとつピンと来ないんですよね。
       いままでの説明はわかりやすいとは思うんですが、肝心なところがどうもぼかされているみたいで、こう「ピリっとこない」というか、、、、。
はるか : う〜ん、そうね。やっぱり言葉とか絵だけでは説明しきれないところがあるんじゃないかしら。
       なんといってもレンズ光学は理科系の世界だから、私達みたいな凡人じゃあ無理なのかもしれないわね。
先生 : ちょっ、ちょっと待ってよ。そんなことは無いわよ。
      もちろん最後の最後は数式とコンピューターの世界だけど、私達文科系人間だって、ちゃんと理解できるはずよ。
          じゃあ、こうしましょう。今日の授業は中止にして、これから撮影大会にします。

ジロー : やったー。

先生 : 来週のこの時間にジローの「もやもや」を解決しましょう。 ところでみんな今日はカメラ持ってきた?
みんま : は〜い。
先生 : どれどれ、どんなカメラかな?
ジロー : ぼくは「
NIKON SPのブラックモータードライブ付にZUNOWの50mmf1.1のSマウント・ピンポン旧型」で〜す。
はるか : 私はやっぱりデジタルだから、「
ライカM8にKino-Plasmat 75mmf1.5」にしたわ。
先生 : あら、凄いのね。そんなの持ってどうやって学校にきたの?
はるか : 先生は何を使うんですか?
先生 : 先生は軽いカメラがよいから、
Adox/AdretteのKleinbild-Plasmat 50mmf2.7付」よ。
ジロー : わっ、珍しいですね。Kleinbildに50mmなんてあったんですか。
先生 : そうよ。今度ROLANDの70mmのKleinbild-Plasmatと撮り比べするわね。とにかく、出かけましょう。来週の授業に遅れないでよ。
ジロー : ようし、モータードライブでスナップしまくるぞ!!!

(次の週)


先生 : 皆さん、こんにちは。さて、先週の約束の通り、ジローの「もやもや」解消授業を始めますよ。
      じゃあ、ジロー、疑問をどんどん言ってみてくれる?

−−−−−質問 1−−−−−

ジロー : とにかく、レンズの説明って、全く一般人が納得できるように書かれていないんですよ。
       例えば、「球面収差はレンズが球面であるために必然的に発生する」なんて説明がよくあるんですけど、こんな不親切な説明はないですよね。
       「なんで球面だと発生するのか」という説明がないんだから。

先生 : 本当ね。だからこの素人レンズ教室があるのよ。でもこのジローの疑問は判るわね。では、これははるかちゃん答えてくれる。

はるか : は〜い。


 

先生 : みんな、判ってたわよね。
      一言でいうと周辺に入る光のほうが「屈折率が高い」ということだから、1枚のレンズで球面収差を少なくするためには、
     
 @できるだけ周辺部分のガラスを薄くして、A球面が被写体側だけにある平凸レンズ型にする。
      ようにするとかなり改善するわね。でも単レンズでは完全に補正するのは難しいので、ほとんどのレンズでは凸レンズの後ろに逆の屈折特性
      を持って凹レンズをいれるのね。
         繰り返しになるけど、球面収差は「レンズ入射時の光の座標が問題なので、絞ればどんどん少なくなっていく」ということよ。


−−−−−質問 2−−−−−

ジロー : 球面収差の説明って、必ず光軸に平行ですよね。
       ネットとかで調べても、ほとんどの説明が「光軸に平行な光線が入射した場合、、、」とか、「光軸上の点光源から発した光が、、、」とかです。
       「軸外の斜めの光では球面収差は出ないっていうこと?」ですか?
       平行光線って像面の中心の僅かな点として焦点を結ぶ(結像)訳ですけど、そんなミクロな部分のボケだけ問題にしても仕方が無いと思う
       んですけど。
       レンズに入る光線のほとんどが何かしらの角度が付いているわけだから。

先生 : 斜めの光(軸外の物体)でも同じような「現象」は発生してるわよ。

      
でも、普段私たちが使っている「ザイデルの5収差」というのは、光の結像性能を悪化させる現象を「分析して、分類し、説明した」ものなの。
      球面収差というのは、「光軸に平行な光線も含み画角に関係なく発生する収差」
と定義づけしたものなので、そう説明されているのね。
    
   
−−−−−質問 3−−−−−

はるか : よく、「球面収差とコマ収差は同じもので、平行光線だと球面収差、角度がつくとコマ収差になる」と聞くんですけど、これはどうですか?

先生 : 難しいわね。確かに両方の収差が
円を描きながら像点がずれる現象はよく似ているといえるかもしれないわね。
     ただ、ザイデルが光線を分析して、収差を分類した結果、理想の結像点を中心として円形にずれる収差を球面収差、結像点から移動しながら
     円形にずれる収差をコマ収差として定義づけられているものだし、後でまとめるけど、収差の性格としては
「レンズ口径との関係、光線角度との関係、
     そして収差の発生方向」
 も異なるものよ。


−−−−−質問 4−−−−−

ジロー : 先生、なにかこう収差の特性が一目で判るような、う〜ん何て言うか、、、、ないんですか?
先生 : そうねえ。じゃあ、こんな表とグラフはどう?


 
 

先生 : どう?わかりやすい?
      でも注意しなくてはいけないのは、グラフの各収差の直線や曲線は、それぞれの口径や光線の角度による変化を示してはいるけど、収差と収差
      の
相対的な大きい・小さいを比べるものではないですからね。

ジロー : でも、良くわかるよ、先生すごいね。
       
レンズが大口径になればなるほど、球面収差はぐっと大きくなってくるんだね。それと、画面の中心付近の収差は球面収差がはじめ優勢で、
       より周辺になってくると、コマ収差や非点収差がどんどん大きく
なってくるんだね。
はるか :
絞ったときは球面収差はむしろ一番小さいのね。むしろ非点収差や像面湾曲はなかなか消えないのね。


−−−−−質問 5−−−−−

はるか : 表のほうを良く見ると、非点収差と像面湾曲って、同じだわ。先生これってどういうことなんですか?

先生 : そうよ、非点収差と像面湾曲は親戚なのよ。簡単に言ってしまうと、像面の湾曲が縦のメリジオナル面と横のサジタル面で異なって発生するのが
      非点収差で、
像面湾曲が分離したものと考えるとわかりやすいかもしれないわ。
      だから、
非点収差の補正のされかたによって、像面湾曲の量も変わってくるということね。


−−−−−質問 6−−−−−

先生 : 他に何かある、ジロー?

ジロー : コマ収差の形って矢みたいだったり、クラゲみたいだったりいろいろありますよね。あれってどんな形にもなるんですか?

先生 : それは難しいわ。写真に出てきた形って、単にコマ収差だけでなくて、コマ収差の形にまた別の収差も加わってさらに変化しているということも
     考えられる。
     でも一つ良いことを教えてあげる。コマ収差のボケを数学的に解析すると、ボケが彗星の尾みたいに流れる距離は、ボケの半径の2倍になる
     ので、
コマ収差の形はの基本は中心線から±30度(60度で広がる)なのよ。

ジロー : へえ、そうなんだ。今度写真で確認してみるよ。

先生 : もう時間ね。じゃあ今日の教室はこれで終わりますね。  


ジロー・はるか : 先生、ありがとうございました。


終わり